別にみさきのせいとか、そういうことは思わないでほしい
そういうつもりではまったくないし、そもそもそんなことはないから…
みさきの体調が悪いのは確かにもちろんとても心配
だけどそのことに責任を感じないで
みさきは何も本当に何も悪くない
むしろみさきはとてもかわいそう
俺は救い出してあげたいけれど、それが叶いそうにないほどにかわいそうで
俺は自分がとてもダメだと思う
みさきがそんなことないと言ってくれても
俺はやっぱりそうとは思えなくて
もっと自分がしっかりしないといけないと思う
だから俺はやっぱりこんな自分は認めたくない
だけどこれは俺自身のすがた
認めようと認めまいと、俺が今こういう自分であることは紛れもない事実
何かに集中するということがここ最近格段に難しくなった
勉強のためにシャープペンシルを手に取っても進まない
それに日によっては字がうまく書けない
書こうと思っていることが書けない
教科書を読んでも頭に入ってこない、文字が何を意味しているのか考えられない
文字というものが意味を持つものではなく、インクが押し付けられた模様にしか見えなくなる
ソシュール的に言えば、それらはシニフィアンでしかなくなる
終いにはそこに座っていることさえ嫌になって体が衝動的に動こうとする
でも俺は勉強しようとする
大学に居ると体温が高くなっているように感じる
些細なことに驚いて心拍数が上がり、体が熱くなって汗が噴き出てしまう
落ち着く方法もあまりない
インターネット接続も安定しない
落ち着こうと思って煙草を吸いに行ってみても
結局それが自分の行き着くところか、と思う
特に月曜日以外、大学で誰とも会わない日は
そういう流れが全て一人で完結してる
誰も俺がそうしていることは知らない
別に他の誰かに知ってほしくもない
煙草は俺の友達、
交換可能な友達
別にその一本一本に拘ることも無い
道端に捨てることに何のためらいもない
吸っている間は漠然と落ち着くような気になる
だけど吸った後は憂鬱になる
現実が一気に押し寄せてくる
バイトの時にとても感じる
俺にはみさきしかいない
結局ビールの缶を開けてしまう
金曜日の夜もそう、
申し訳ないと思いながら缶を空けて日本酒をコップに注ぐ
しかもそれは俺の金で買った酒じゃなくて家にある酒で
俺は自分が糞野郎にしか思えない、そしてそういう現実を加速させるような気がした
周りのすべての人に、申し訳なく思ってる
俺は見た目という意味じゃなくて外面を保ってる
例えば親には俺は真面目に頑張っているように見せてる、というかまあ、自動的にそう見えているからそれに任せている、あるいはそのことを利用している
そんな感じで俺は色んな事で、色んな人に申し訳なく思ってる
けれど謝りたいとは思わない
だから正確に言えば、申し訳ないという気持ちではなく、どちらかと言えば「悲しい」という感情の方に含められるかもしれないけれど
自己肯定感というのが吹き飛んだ気分だ
大学生活は上手くいっているとは言えない
俺は大事な書類を読む気にはなれない
キャリアを積むためのセミナーやそういう意識の高いイベントに参加する気には到底なれない
だけどこの気分が去っていくのを待っている時間もありそうにはない
これを取り払うには時間がかかりすぎる
俺はやり過ごすだけではいけない、俺はたくさんのことを得なければならない
自分がダメという意識に囚われずにはいられない
それを紛らすために酒を飲んでも煙草を吸っても空しくなる
自分のしている勉強の効率性やそれから実際に得られる効果に全く自信が持てない
一旦人生を一休みして、立ち止まる時間がほしい
俺には立ち止まることが許されていない
でもいっそ引き金を引けるものなら引いてしまいたいとも思う
椅子を蹴ることができるなら蹴ってしまいたいと思う
肉を薄く切るだけでは何も得られない
やはりそれでは虚しさしか残らない
すべては俺の行き着くところ
今までの生き方が示してきたところ
避けては通れなかったところ
そうして自分を正当化すること
そしてそれを諦めるところ
それが当たり前だと思い込むところ
俺にはみさきしかいないんだよ
みさきは俺に与えてくれる