2019年9月19日木曜日

自分「あっ、ねこ」
ねこ「にゃー」
自分「よしよし」

ねこ「お前、就職先決まったんだって?」
自分「うん。よく知ってるね」
ねこ「猫は地獄耳ってよく言うだろ」
自分「いや初耳」

ねこ「さて。これでお前もようやく分かっただろ。自分の人生を切り拓いていくってことの意味が」
自分「そうだね。少しだけ、分かってきた気がする」
ねこ「うぬぼれるな。お前はまだ何も分かってない。お前は扉を開けただけで、扉の奥の世界を見通したつもりになってるだけだ。勝って兜の緒を締めよ、それ一番言われてるからな。お前はまだまだだ。だが扉を開けたっていうのは一つの進歩であることは俺も認める。そこからお前が得るべき教訓はただ一つ、"扉はそれを叩く者だけに開かれる"ってことだ。それ以上を語ろうとするな。ともかくお前は自分で選んだ扉を自分で叩き、開けさせてもらった。面接っていうものにお前は嫌気が差しているかもしれんが、あれはある意味でその縮図だ。まずノックしなければ、「どうぞ」という声は帰って来ない。「どうぞ」という声が無ければ、ドアを開けることはできない。つまりそういうことだ、あれは人生の選択のメタファーなのさ」
自分「それはさすがに考えすぎでは?」
ねこ「お前に何が分かる。俺はそんな経験を何度してきたと思ってる?俺は毎回、家の前でにゃーと鳴かなければ家に入れてもらえないんだ。俺はその度に人生の教訓を感じ取っているよ、"扉はそれを叩く者にだけ開かれる"ってな。その点お前は、鍵などというものを持ち歩いて、いつでも好きな時に扉を開けられる。俺たち猫にとってお前は、とんだ甘ったれとしか思えない」
自分「大袈裟だなあ。ていうか飼い猫だったんだ」

ねこ「さっきからお前はなんだ。俺の話を真面目に聞いているのか?甚だ疑わしいな。まあ俺は所詮猫だからな。お前が耳を傾けないのも無理はないかもしれない。だが俺は、お前にとって警告者なんだよ。俺はお前の前にふっと現れ、お前を戒める。…まあいい。俺はお前にまたいくつか教訓を与えたい」
自分「ほんとにねこなの?」

ねこ「お前が人生で意識すべきことをお前に示してやるから、よく覚えておけ。もちろん前回の戒めはこれからも心に留めておけよ。その一、目標を忘れるな。お前は何を思って、何のためにその業界を選んだんだ?そのことを意識し続けろ。世の中、初心を忘れないでいられる人間が多いわけではない。仮に最初は頑張れたとしても、そのうちそれなりの成果を出せた頃にはぬるま湯に浸かりだす連中が殆どだ。そういう奴らを出し抜いていくくらいの気持ちがなければ、連中を越えていくことはまず無理だと思った方が良い。その二、「目的は手段を正当化する」を履き違えるな。これはその一とつながっていて、その一を前提とした箴言だ。お前にとって、人生の「目的」とは何だ?そして「手段」とは何だ?目的のために手段があるわけだが、手段を選ぶことを忘れるな。これは非常に含蓄に富む箴言だ、よく考えろ。「目的」と「手段」、それらを共に最適なものにしなければいけない。多くの「目的」は、ある長期的な視点にとっては短期的な目的に過ぎない。つまり、長期的な視点に立ったときに、長期的な「目的」に資する「目的」を適切に選ぶことが大切だ。目的を目指すこと自体が目的と化すのは、精神的な衰退の兆候だ。本当に大切な目的とは何か、それを見極めろ。そして、その本当の目的を見据えたとしても、手段を選ぶことを忘れるな。…妙な話だし、今のお前にはよく分からないかもしれないが、時に手段は、長期的な目的にそぐわないことがある。勿論それ自体が悪いことというわけではないし、人生というのは長いのだから、時にはそのような選択を強いられることもあるかもしれない。だが、そうしたことを理解した上でもなお、自分にとって好ましくない手段を選ばなければいけなくなったときに、「本当にその手段を選ばなければいけないのか」を考えてほしい。俺が言いたいのはつまり、目の前の手段を追求することが必ずしも究極的な目的に資するとは限らないってことだ。目の前に用意された、それも大多数が選びがちな手段を選んでも、人生なんて恐らく「なるようになる」だろう。確かに、どんなに状況がクソだとしても、人生なんてなるようになるんだ。だが、その「なるようになった」結果が良いか悪いかはさっぱりわからない。成り行きに任せることで良いようになることもあれば、次第に悪化していくこともある。どちらに傾くかはお前次第であって、お前の判断、お前の天秤で状況は変えられる。燃え盛る部屋にいて、「そのうち鎮火するだろう」と家の中にいるか、慌てふためいて身一つで外に飛び出すか、携帯電話を掴んで飛び出し消防に連絡するかはお前次第だ。まあちょっとこれは、極端な例だったがな。しかしいずれにせよ、お前の選択であることに変わりはない。お前の選択で未来は変わるだろうし、お前の行動が将来のお前の姿を左右するだろう。だが一方で未来というのは、単純に「過去の総和」ではない。人間には不思議なことに、いや俺たち猫にとってもそうなのかもしれないが、「予測不可能性」とやらがあるらしい。お前がこれまで積み上げてきた選択のパターンは非常に強い説得力を持って「お前は次にこういう行動を取る」という予測をできるかもしれないが、だがお前は必ずしもそれに縛られてはいないんだ。決定論者のお前からすれば、俺の話など笑止千万だろう。だが、俺が言いたいのは、「お前が何かを変えようとすれば、その行動を取ることができる」という可能性の話だ。…あれ、いつの間にか話ずれてるな?ちょっと話が長くなりすぎてきて、最初に何言ったか忘れてきた」
自分「なんだこのねこ相変わらずめっちゃ喋るじゃん」

ねこ「…にゃー」
自分「おーよしよし」



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